ITベンダーのCX研究室

CX展示会・セミナーレポート速報

 皆さんこんにちは。ITベンダーのCX研究室のnatureです。本日もブログをお読みいただきありがとうございます。

 先日、幕張メッセで開催されたデジタルイノベーションの総合展示会「CEATEC2024」(10/15~18開催)に参加してきたので、レポートさせていただきます!

 

1.  イベント概要

「CEATEC2024」の開催テーマは「Innovation for AI」で、AIに焦点を当てた未来社会と最新技術が広く紹介されていました。そこで本日は、開催テーマであるAIや、筆者が興味をよせる分野であるCXについて簡単にレポートさせていただきます! 
 本レポートは、登壇者による講演がメインの「セッション」と、展示がメインの「ブース」の2つのセクションに分けてお送りします。

2.  セッション

2-1. 企業のトップは生成AIをどう見ているのか? 

概要
 このセッションでは、生成AIの現状と未来について企業のトップリーダーたちが語り合いました。
 約半数の企業が生成AIを業務で活用している現在、企業のトップは生成AIの導入をどのように意思決定し、どのように企業を変革していこうと考えているのかをディスカッション形式で行っていました!

登壇者

  • 林氏(ストックマーク株式会社代表取締役CEO)
    • 会社の主な事業内容としては、自然言語処理を活用した企業文化変革の支援を行うサービスの開発・運営です。
  • 中林氏(ライオン株式会社執行役員)  
    • 会社の主な事業内容としては、オーラルケアやビューティーケア製品、ファブリックケア製品、リビングケア製品に加え、薬品等の製造販売があります。
  • 小川氏(株式会社AIST Solutionsプロデュース事業本部 事業プロデューサ)
    • 会社の主な事業内容としては、「国立研究開発法人 産業技術総合研究所」の研究・技術アセットとマーケティングを掛け合わせ、共同研究・事業共創・バリューチェーン構築・スタートアップ事業創出を行っています。 


生成AIの活用
 自社での生成AIの活用について 3名で話されていましたが、特にライオンの中川氏が話していた内容が印象に残りました。

  • ライオンでは2023年に全社に向けて生成AIの活動を開始し、自社開発の対話型AIとしてLION AI Chatを活用している
  • 生成AIの方向性として、1つは広く社内で生成AIの活用を広める。2つ目は領域特化で社内データを活用する
  • テキストワークでは収集と検索に時間がかかっていたが、RAGを活用することにより、作業が1/5に削減
  • 社内でDifyという生成AIアシスタントも個人的に活用している
  • 人材育成として、ITデジタルリテラシーのスキルチェックを全社員にやってもらっている

未来の生成AI活用について
 2,3年後の未来の生成AI活用について、3名でディスカッションしていました。
・おそらく生成AIにも使い分けが発生してくる
→今は汎用・一般モデルを使っているが、よりビジネスに特化したものが使われるようになる(産業特化や化学、企業特化など)
・昔はウェブで情報を集めた当たり前のことのみ生成AIが収集し回答していたが、未来としては自社の過去から現在までを理解し、仮説立てた回答が可能になると予測されている
・ノーコードツールを使ってユーザー自身がルール生成の仕組みを活用できるようにしていく必要がある 

未来の生成AIのためにこれからするべきこと
 未来の生成AI活用から、今するべきことや課題が明確になりました。
・図や表、文書が混在しているまま、生成AIにインプットしていたため、データが不十分となり、ドキュメントが苦手な生成AIは理解できず、適切な回答が返ってこなかった 
→そのため生成AIに組み込む前に、データの整理をすることが重要であり、紙で残っているものをどうやって生成AIに組み込むかは課題である

所感
 生成AIに携わる企業のトップマネジメントの方々の考えや意見を聞く機会はなかったので、充実した1時間になりました。現在と未来の生成AI活用ギャップから今するべき、大事なことが見えてくるような、そんなセッションでした!

 

2-2. スマートホーム×データで、人と企業を繋ぎ、日常をアップデートできるのか? 
~共創型マーケティングプラットフォームへの挑戦~

概要
 本セッションのメインテーマは、スマートホーム技術とデータ活用がどのように生活者と企業を結びつけ、私たちの日常をどう改善できるかというものでした!特に、共創型マーケティングプラットフォームという新しい取り組みが、これからの鍵になりそうです。

背景
 今、私たちは日々の生活で、無意識に多くのデータを生み出しています。 
 スマートデバイスを使うたびに、その利用履歴が記録されているのですが、実際に「生活が便利になったな」と感じることは少ないですよね。スマートホームの技術自体は進化しているものの、生活者がその恩恵を実感しにくいという課題があります。

解決策:共創型マーケティングプラットフォーム 
 そこで登場するのが「共創型マーケティングプラットフォーム」です。 
 これは、複数の企業が生活者を中心にデータを共有し、それぞれのIDを統合して、生活者に価値を還元するという仕組みです。この取り組みによって、生活者はより快適な日常を得られることが期待されています。 
 具体的には、スマートホームにテーマごとにIoT機器を設置し、それを利用する生活者のデータを活用して、消費財メーカーなどがそのデータを基に生活者に合った商品やサービスを提供するという流れです。 
 また企業も、生活者の実際の生活に合わせた価値提供が可能になるので、両者にとってwin-winの関係が築けます。 

共創型マーケティングプラットフォームのメリット
 企業側の最大のメリットは、生活者のデータをリアルタイムで把握できる点です。 
 従来のマーケティング手法では、実際にどれくらい商品が使われているのか、生活の中でどう役立っているのかが分かりにくかったのですが、このプラットフォームでは、それらが可視化されます。その結果、より的確な商品やサービスを提供できるようになるのです。 

所感 
 このセッションを通じて、企業同士が手を組んで新しいマーケティングプラットフォームを築こうとしている姿に、とても期待を感じました。1社だけでは難しいことも、複数の企業が協力することで、生活者に今までになかった価値を提供できる可能性が広がっています。 
 ただ、いくつかの課題も見えてきました。まず、生活者が自分のデータをどこまで提供しても良いと思うか、プライバシー問題が大きなテーマになります。家の中でデータを取られることに抵抗を感じる人も多いでしょうから、ここをどうクリアするかが重要です。 
 もう一つの課題は、プラットフォームを通じて、どれだけの「実感できる価値」を生活者に還元できるか。現段階では、まだ概念実証(PoC)段階ですが、具体的に生活がどう便利になるのか、早く実績を積み重ねることが必要だと思いました。 

2-3. ラトビアパビリオンピッチ 

概要 
 ラトビアパビリオンピッチでは、ヨーロッパ北東部に位置するバルト三国の中の一国である「ラトビア」のIT企業4社(ARETAI社、HANDWAVE社、VIVID TECH社、LINEARIS社)の最新の製品・ソリューションが紹介されました。

詳細
 ARETAI社は、ハイエンドオーディオブランドの取扱を行う会社です。 
 セッションでは冒頭に、スピーカー本体から発する音と、壁や床、天井などから反響して聞こえる音の違いについて説明があり、その後自社のスピーカーと他社のスピーカーでの音の聴こえ方の違いについて説明がありました。ARETAI社のスピーカーであれば高音域と中音域の音が広く分散され、バランスのとれた反響音を可能にしてくれるそうです。 

 HANDWAVE社は、BaaS(Biometrics as a Service)の開発を手掛ける企業です。 
 セッションでは、手のひらの静脈を用いた認証や決済方法のソリューションについて説明があり、手のひら認証が顔認証や指紋認証といった他の生体認証と比較して、安価で認証制度も高いことを説明していました。 

 VIVID TECH社は、小売店において価格や製品情報を表示するタッチスクリーン付きのディスプレイを取り扱う企業です。 
 このディスプレイの導入により、リアルタイムなコンテンツ更新や顧客行動に関するデータの収集ができるそうです。VIVID TECH社のディスプレイのソリューションはSamsungやDeutsche Telekomといったグローバル企業でも採用されているそうです。 

 LINEARIS社は、主に様々な手段での翻訳サービスを提供する会社です。
 セッションにおいてはスライドに投影されたQRコードをスマートフォンで読み込むことで、英語でのプレゼンが同時通訳されてスマートフォンから日本語音声を聞くことができるという画期的なサービスを提供していました。 
 筆者は左耳で通訳の日本語、右耳でプレゼンの英語を聞いていましたが、数秒程度のラグはあるものの話し手の主張を大まかに理解できるくらいの精度で通訳がされており、発音も流暢でした。 

所感
 4社ともCX向上に役立つソリューションを提供しており、今までに体験したことのない技術に触れ合うことができて感動しました。筆者はHANDWAVE社のブースも見学させていただきデモを実際に試したのですが、認証の速度が速く、日本国内での展開が楽しみなソリューションでした。総じて、ラトビアの4社の技術力の高さに驚き、今後の日本でのソリューション展開が期待される、そんなセッションでした! 

 

2-4. 位置情報データのビジネス活用と社会実装 

概要
 「位置情報データのビジネス活用と社会実装」のセッションに参加してきました。 
 セッションでは、一般社団法人LBMA Japanと、その会員企業であるKDDI、ソフトバンク、NTTデータによって、ディスカッションが行われました。ディスカッションのテーマは「位置情報データのビジネス活用」と「プライバシーへの配慮」です。 

 LBMA Japan
 セッションでは、 LBMA Japan の紹介もありました。一般社団法人LBMA Japanは、位置情報データのビジネス活用・位置情報データプライバシーの推進団体とのこと。そんな一般社団法人もあるんですね! 

(参考)カオスマップ
 LBMA Japanは、位置情報マーケティング・サービスのカオスマップを公開しています。カオスマップでは、位置情報ビジネスにおける各領域において、それぞれの領域を得意としている企業がわかるようになっています。位置情報データの収集からビジネス活用まで、どのような企業がどのような領域に取り組んでいるのか、俯瞰してみることができます。すごくわかりやすいです。 
カオスマップ | LBMA Japan 

所感 
 通信事業者の3社の方向性の違いを知ることができてすごくおもしろかったです。 一例ですが、KDDIやNTTデータが人流データの活用をメインに話している中で、ソフトバンクは、建設業や農業等の、情報の精度が必要な業務に対して位置データの活用を行っていました。通信事業者の取り組みはどの企業も同じだと思っていましたが、各社それぞれの方向性を持っていることが分かりました。 
 また、今後注目していきたいこととしては、NTTデータの 人流データ活用です。NTTデータは現在、道路データや人流データから、小売業界向けに出店計画の意思決定支援を行っています。(BizXaaS MaP 人流分析サービス) 

 今後のビジネスの方向性として、個人の行動データから商品のレコメンドを考えているというような話がありました。将来的には、行動データから個人の特性や好みの分析が行われ、お店や街を歩いているだけで商品やサービスがレコメンドされるような未来がやって来るのかもしれません! 

 

3. ブース 

3-1. 日立製作所 

概要
 はじめに、日立製作所のブースを紹介します。日立製作所は、大手総合電機メーカーとして、情報・通信システム、社会・産業システム、エレクトロニクス機器、建設機械など多岐にわたる事業を展開しています。ブースでは、IoTやAIを活用したスマートシティソリューションなどが中心に展示されていました。
 その中でも特に筆者が気になったものは、作業判断を支援するAIアシスタント技術です!実際に行っている作業者の動きをAIアシスタントが文章として報告してくれるため、作業内容を一目で把握することができます。 

題目
 フロントワーカーの作業判断を支援するAIアシスタント技術 

技術を活用する前提内容
 現場のデータや作業データを3Dモデルにすることに加え、データを貯め、AIアシスタントに情報を入れ込み、作業者が何をしているのかをチャット上のAIアシスタントで把握できるようにする。 

技術内容

  • 作業をしている人の目線をAIアシスタントが教えてくれるため、今どの作業を行い、何を確認しているのかAIアシスタントを通して把握することができる
  • 異常があった際には異常があると報告してくれるだけでなく、何がどういつもと異なるのか(異常音の音色など)を図で用いて教えてくれる
  • 服を着用するだけでモーションキャプチャーでき、服で作業者の動きを把握することができる。また作業者の姿勢を見て、作業非効率な姿勢を正すため、適切な作業の姿勢が提案される
  • 今日どんな作業をしたかを1日の最後にAIアシスタントで振り返りすることができる

所感
 作業者の身体の動きのみをAIアシスタントが読み取るのではなく、目線の動きによる作業チェックなどもAIが認識できることに偉大さを感じました。
 また普段と異なる部分がブラックボックス化されているのではなく、明確に図として提示してくれることにも驚き、技術の進歩を感じました!  

 

3-2. TOPPAN 

概要
 CEATEC2024で注目を集めたTOPPANのブースを紹介します。 
 TOPPANといえば、印刷技術を基盤に幅広い分野で活躍している企業で、特に情報・ネットワーク、パッケージング、生活環境、エレクトロニクス分野に強みを持っています。そんなTOPPANのブースでは、最新のデジタル技術が披露されており、特に「AIによる3Dシーン生成」と「教育分野へのLLM(大規模言語モデル)活用」が大きな注目を浴びていましたので紹介いたします。 

AIによる3Dシーン生成 – 未来のクリエイティブを体感
 まずご紹介するのは、「AIによる3Dシーン生成」です。この技術は、テキストを入力するだけで、画像生成AIがベースとなるシーンの画像を作成し、それを3Dシーンに拡張するというものです。 
 さらに、自由視点映像技術を組み合わせることで、様々な角度から映像を見ることが可能になります。 

 実際のデモでは、簡単なテキスト入力からリアルな3Dシーンが生成され、そのシーンを自由に動き回る感覚を体験しました。将来的には、建築デザイナーや建材設計者が、AIによって作成された具体的なアイディアをもとに、設計のイメージを他の人と共有するための手段として活用されることを目指しているとのこと。クリエイティブなアイディアを瞬時に3D化し、他の人と共有できるこの技術は、建築業界だけでなく、エンターテインメントや広告業界でも活用される大きな可能性を秘めています。 

教育分野へのLLM活用 – AIで変わる教育の未来 
 次に、非常に興味深かったのが、TOPPANが東京書籍と連携して進めている「教育分野へのLLM活用」です。教育現場でのデジタルトランスフォーメーション(DX)は、まだまだ進展が遅れている分野という印象がありますが、この取り組みはその課題を打破するものになると予想できます。 

 このプロジェクトでは、TOPPANがLLM(大規模言語モデル)の運用を、東京書籍が教育データの提供を担当しています。AIが過去の教育データを学習し、自動で問題を作成、採点、さらにフィードバックまで行うという画期的なサービスです。これにより、先生がこれまで行っていた時間のかかる業務をAIが代行し、先生は生徒と向き合う時間にもっと集中できるようになります。 
 教育の現場での労働環境改善や効率化が期待される一方で、課題としてはAIの精度向上が挙げられていました。特に、問題の質や採点基準が既存の基準にどこまで正確に適応できるかが、今後の大きなポイントとなりそうです。しかし、このサービスが実現すれば、日本の教育現場におけるデジタル化が一気に進み、教育の質や働き方改革にも大きな影響を与えることになると思います。 

所感
 CEATEC2024では、TOPPANの最先端技術が数多く紹介されていましたが、特にAIと教育DXの分野での進化には目を見張るものがありました。3Dシーン生成技術は、今後クリエイティブ業界を変革し、教育分野ではAIによる業務効率化が労働環境を大きく改善する可能性を秘めています。これからの未来、私たちの生活や仕事がどのように変わっていくのか、期待が膨らみますね! 

 

33. Preferred Networks 

 Preferred Networksは、ディープラーニング技術を用いたソリューションを提供する企業で、製造業、ライフサイエンス、交通システム、ロボティクスなどの分野で活躍しています。ブースでは、Preferred Networksの生成AI基盤モデルと、生成AIを活用したプロダクト・サービスの展示が行われていました! 
 展示の中でも特に筆者が興味深かったのは、「Preferred AI Notes」「Preferred AI Automation」です。順に概要を説明します。 

Preferred AI Notes 
 「Preferred AI Notes」は、社内データを検索して文書やスライドを作成してくれるサービスです。実際にデモを拝見しましたが、プロンプトを念入りに考えなくても、ユーザーが細かく指示を出せるようにプロンプトの入力欄が分かれており、ユーザーによる細かいリクエストが可能です。文書やスライド作成業務の効率化が図れることを実感しました。 

Preferred AI Automation
 「Preferred AI Automation」は、複雑な定型業務でもミニアプリにして自動化できるサービスです。請求書発行やレポート作成などの日常的なワークフローのみならず、データ抽出タスクといった高度な業務も自動化することができます。 
 また、出力フォーマットも任意に設定できるため、社内フォーマットに従う必要がある場合でも心配は無用とのことです。 

所感
 筆者も業務効率化に向けて生成AIを利用し文書の骨子を作成することはあるのですが、生成AI利用が未熟なこともあり、プロンプトを考えて、与えて、と何度も繰り返さなければ満足のいくアウトプットが出てこないことが多々ありました。しかしながらこちらの展示を見て、「Preferred AI」を利用することでより簡単でスムーズに満足のいくアウトプットが得られ、業務効率化が図れると感じました! 

 

4. 最後に 

 以上、CEATEC2024で興味を持ったセッションとブースについてのレポートでした。多くの革新的な技術が紹介されており、近い将来の自分の生活や働く姿を想像する貴重な機会となりました。 
 「CEATEC」は毎年10月に幕張メッセで開催されており、2025年は10月14日(火)~17日(金)での開催です。皆様もぜひ来年の「CEATEC」に足を運んでみてはいかがでしょうか?きっとワクワクする技術と出会えるはずです! 
 お読みいただきありがとうございました。 

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