皆さん、こんにちは!ITベンダーのCX研究室のよっしーと申します。当ブログにアクセスいただきありがとうございます!こちらのブログでは、CX(顧客体験)関連の展示会やセミナーに参加して仕入れた最新情報をお届けしてまいります。
さて今回は、2024年6月12日に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された「宣伝会議サミット2024(夏) 東京」に参加してきたので、その内容についてレポートしたいと思います!
■概要
宣伝会議サミット2024(夏) 東京 (event-forum.jp)
「宣伝会議サミット」は、企業のマーケティング担当者やCMOなど、マーケティングやコミュニケーションの役職者が集まり、経営とマーケティング、企業と顧客との関係について、最新の実践知識を共有し、次なる戦略のヒントを導き出すことを目的としたイベントです。
今回のテーマは「アジャイルなマーケティング」。「アジャイル型」のマーケティング戦略はどのような経営方針や体制のもとで実現できるのか、どのような組織や人材が必要なのか、外部パートナーにどのような役割が求められるのか、など社会と生活者が常に変動し続ける時代の最先端のマーケティングの実践論が議論されました。
3つの会場で全26の様々なテーマのセッションが開催され、多くの方が来場されていました。中でも今回のポストでは、2024パリオリンピックが1か月後に近づいてきたということもあり、スポーツに関連した2つのセッションについて取り上げます。
目次
セッション1. 体験価値の再設定~なぜ新市場を切り開くことができたのか
セッション2. アディダスの事例にみるブランドが顧客に提供する価値の進化
■セッション1. 体験価値の再設定~なぜ新市場を切り開くことができたのか
まずは、『プロ野球球団 北海道日本ハムファイターズ』の事業運営会社である、株式会社ファイターズの小川 太郎さんと、昨年のW杯で注目を集めた日本のバスケットボール、その日本国内のプロバスケットボールリーグ『B.LEAGUE』執行役員の田茂井 憲さんのセミナーに参加しました。本セミナーではプロスポーツチームが熱狂的なファンはもちろん新しい顧客を取り込むために、新しい技術の導入や顧客サービスの開発、顧客体験演出、クリエイティビティの再考など、新しい視点からのスポーツに関わる顧客体験価値の再定義について自社の取り組みを交えて議論されていました。
議題は、「プロスポーツチームの抱える顧客体験課題、テクノロジー活用によるイノベーション、地域との共創による価値創造」の大きく3つに分かれており、特に印象的だったのは、株式会社ファイターズさんでのテクノロジー活用によるイノベーションに関する取り組みについてのお話でした。
株式会社ファイターズさんでは、2023年3月に新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」と共に、スタジアム周辺を含めたエリアに北海道ボールパーク「Fビレッジ」を開業されました。
Fビレッジ開業に向けて、統合顧客ID(F VILLAGEアカウント)を軸としたマーケティングプラットフォームの構築と浸透に取り組まれたそうです。そしてその中核となったのが、『Fビレッジを満喫してもらうためのパスポート』というコンセプトのもと、来場時の便利ツールと来場者とのタッチポイントとして開発されたFビレッジ公式アプリでした。
この公式アプリでは日本ハムファイターズの試合情報だけでなく、Fビレッジ内のホテル予約やキャッシュレス決済も行うことができ、POSレジなどの施設側のインフラから一気通貫で構築することで実現されたそうです。シーズン終了後のユーザーアンケートでは、95%がアプリが必要だと認識しており、アプリをきっかけにファンクラブに入会するという効果もあったそうです。
導入初年度となった昨年は、まず基盤を整え、情報を取得して分析を進めたそうです。分析によって、野球観戦目的の年齢層が高い男性の利用は多いものの、野球観戦以外の利用需要が高いことも見えてきたとのことで、野球目的でない層も集められるような観光・行楽需要への施策にも力を入れていきたいとおっしゃっていました。
そして、今年度からはデータを活用してプロモーションの強化に取り組まれるそうです。野球目的でない層に対しては、グランピング施設での親子キャンプやドッグラン、ヨガイベント、ランニングイベントなどを開催し、来場体験を向上させていくことでアプリの存在価値も高めていくそうです。
株式会社ファイターズさんのお話を聞いて、データに基づいたニーズに応じて、エリア・施設開発やイベント等の施策に落とし込むことができれば、施設全体の回遊性が高まり、総合的な体験価値はますます高まっていくのではないかと感じました。加えて、より効果的に顧客体験価値の向上を図るには、カスタマージャーニー全体を俯瞰したアプローチが必要であると再認識しました。
Source:(北海道ボールパークFビレッジ (hkdballpark.com))
■セッション2. アディダスの事例にみるブランドが顧客に提供する価値の進化
次に、世界的なスポーツ用具メーカーである『adidas』の日本法人であるアディダスジャパン株式会社の福田 新さんによるセミナーに参加しました。本セミナーでは、”Through sports, we have the power to change lives (スポーツを通して、私たちには人々の人生を変える力がある)”というブランドミッションのもと、商品や機能だけではなくブランドとして、さまざまな体験を通して顧客に価値を提供していくブランドコミュニケーション/ブランドマーケティング事例についてお話されていました。
ご紹介いただいた事例の中で印象的だったのは、ブランドメッセージの再構築と顧客との共創による関係構築についてのものでした。
ブランドメッセージの再構築とは、2023年まで使われていた”Impossible is nothing (「不可能」なんて、ありえない)”というブランドメッセージを、現在のユーザー像に合わせて再構築に取り組まれたというお話でした。
再構築にあたって、adidasのミッションである「スポーツの持つ可能性を最大限引き出すこと」に立ち返るため、トップアスリートから趣味で運動を楽しむ方々まで現代の様々なユーザーにヒアリングを行うことでパフォーマンスを発揮するうえでの阻害要因を調べたそうです。その結果、プレッシャーが最も大きな阻害要因だと判明し、既存のブランドメッセージでは過度なプレッシャーによってスポーツの可能性を狭めていると感じられたそうです。
そこで、プレッシャーから解き放つことによりスポーツの可能性を引き出すため、”You got this (大丈夫、いける)”という新たなブランドメッセージを考案されました。そして、実際にユーザーへメッセージを届けるために、スポーツモーメントに合わせた様々なキャンペーンをされたそうです。
そのキャンペーンというのが、顧客との共創による関係構築のお話でした。これは、箱根駅伝というモーメントにおいて新ブランドメッセージを発信するとともに、一般ランナーを巻き込んだイベントにより、ユーザー体験を通して新ブランドメッセージを発信したという事例でした。
ブランドアイコンとなるアスリートに対しては広告制作を通して新ブランドメッセージを届けられたそうで、広告塔となった青山学院大学の黒田選手が区間賞、國學院大學の平林選手が8人抜きの快走をされるなど、アスリートの結果を後押しするブランドコミュニケーションが成功した事例でした。
このようなブランドアイコンとなるアスリートとのコミュニケーションだけでなく、一般のユーザーへ向けてもブランド価値を体験してもらうため、箱根駅伝に合わせて東京シティランというレースイベントを開催したそうです。東京シティランとは、マラソンイベントとは異なる5kmという参加しやすいレース形式に加えて、記録を目指すシリアスなランナーに向けたレースと記録にこだわらないエンジョイランナーに向けたレースを同じ日の同じ会場で行うことで、2000人近くの様々なランナーが一同に体験を共有するものでした。このように、ブランド側の一方的な発信ではなく、一般のユーザーへのブランド価値の体験機会と共にブランドメッセージを発信することで、身をもってブランドメッセージを感じてもらったそうです。
セミナーを通して、その時々のユーザー(アスリート)像に向き合ったメッセージがブランド価値をより高めることにつながり、メッセージを届けるにあたって顧客を巻き込んだ施策により、ブランド価値の向上とともに顧客体験の向上にもつながるのだと感じました。また、ブランド価値とは何なのかについて、仮に全く同じ商品が並んでいても自社製品を選んでもらえることがブランド価値なのだというお言葉も印象的でした。
Source: YOU GOT THIS / 大丈夫、いける。 | 【公式】アディダスオンラインショップ -adidas-
■総括
セッションを通して、スポーツに関わるビジネスではスポーツというコンテンツそのものの大きさは強みではあるものの、CX向上においてはスポーツに関わる全体の俯瞰あるいはスポーツ以外の顧客行動を含めたマーケティング施策が必要なのだと再認識することができました。また、本セミナーで伺った事例においては、いずれも顧客目線での施策検討、実行がなされており、CX向上の第一歩は顧客に寄り添うことからだと感じました。
以上、「宣伝会議サミット2024(夏)」のイベント参加レポート速報でした。
ご一読いただきありがとうございました!
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